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2014年 08月 25日
※以下の感想やコメントは私個人のものです. 当協会の公式な見解ではありませんのでご了承下さい. 工学院大学・八王子図書館は1980年に竣工し,設計は武藤章氏によるものです. 武藤先生については北欧建築に明るい方であればもはや説明の必要はないかもしれませんが,かつてアルヴァ・アールト事務所に籍を置き,帰国後は工学院大学教授として後進の育成に当たられた建築家です. この八王子図書館,実は現在取り壊しの危機に直面しています.事情を聞けば,単に老朽化といった物理的問題よりも,大学側のキャンパス計画や実情に合致しないといった込み入った事情が根底にあるようです. 他ならぬ武藤先生の建築でもありますし,当協会としてもこれは保存すべきと考えていますが,実際には理事のほとんどは実際の空間を見たことがなく,今回の見学会の企画となりました.私としても武藤先生の建築を実際に見るのは初めてのことです. 北欧の貴重な冬の光を室内に導くために,アールトの建築にはありとあらゆる形をした,独創的なトップライトやハイサイドライトが登場します.そしてその期待を裏切らず,武藤先生の八王子図書館もまた導入部から劇的なハイサイドが我々を迎えてくれました.あのアールトの名作,ロバニエミ図書館を彷彿とさせるハイサイドからは柔らかい光が室内を満たしていました. デスクに一つづつ灯された専用のランプ.これもまた図書館建築の名手アールトが好んで用いた手法のひとつです.最近ではさりげなくLEDなどを仕込むのでしょうが,ひとりに一つづつ用意されたランプは,そこに自分だけの居場所を与えています.そして少し下がったフロア構成は,閲覧室で集中して書物に向き合うための落ち着きも与えています. 私が最も感銘を受けたのは,この閲覧室を中心にすべての書架の配置が考えられているということです.図書館のほとんどの書架をここから見渡すことができます.まさに「知の中心に学生がいる」といった構図でしょうか. どれひとつ取っても手を抜いていない.とても丁寧に内部が作り込まれていることがわかります.図書館というより,住宅のような温かみとホスピタリティを感じる空間です.その居心地の良さは,自分が中心にいる喜びであり,それは人間を尊重する北欧の建築思想を色濃く感じさせてくれるものです. 写真はこの図書館のメインファサードを見たところです.「え,これ?」 正直そう思ってしまいました.シンプルと言えばシンプルですが,あまりに素っ気なく,建築に求められるべき象徴性が感じられません.実は北欧の建築にはこういう建築が多いのですが,果たして武藤先生の真意はどこに? アールト建築にもあるんです.抑制して,端正に納めたそのファサードにもワンポイント,不可思議な形状の出っ張りが.そんな愛らしいポイントにちょっと嬉しくなりました. アールトをはじめとした北欧建築は,お世辞にもフォトジェニックとは言えません.現代建築の持つ正面性,つまり「ここから写真を撮ってね」というポイントが見当たらず,シャッターをいくら切っても,なかなか全体を掴むことができないというミステリアスな側面があります. この八王子図書館の空間の本質はその内部にあり,外部はそれを形づくっている”外側”にしか過ぎないのかもしれません.杯を交わしてみれば分かる,温かみに溢れ深みのあるその人間性も,その朴訥さゆえになかなか理解してもらえない・・. そんなもどかしい北欧気質のようなものをこの建築にも感じました.もちろん,それこそが我々が愛する北欧でもあるのですが,もしかしたら,今は亡き武藤章先生もそんな方だったのかもしれません.そしてそれは世間にも知られることなく,ひっそりと取り壊しの憂き目に遭っている・・. 実はこの八王子図書館,今回の見学会にあたって下調べしようとネットで検索したのですが,ほとんどヒットしませんでした.信じがたいことに画像が一枚も拾えなかったのです. このご時世,ネットに情報がないということは”存在していない”ことにも等しいことです.保存活動を展開してゆくならば,まずはその魅力を広く世間に拡散し,共感を集めなくては始まらないように思います.そのため,僭越ながらこの場をお借りして意識的に多くの写真を掲載しました. 本日の見学会を主催してくださいました,澤崎さまをはじめ,工学院大学建築学部同窓会の皆さまには深く感謝申し上げます.本日ご参加下さいましたSADI会員の皆さま,お疲れさまでした. 文責:関本竜太(SADI理事・企画委員)
by sadiinfo
| 2014-08-25 20:16
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