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2012年 10月 26日
![]() SADI講演会 「スティグ・リンドベリ(Stig Lindberg )の仕事と私の仕事」 講師:小松誠氏(プロダクトデザイナー・武蔵野美術大学教授) 日時:9月28日(金)18:30~20:30 会場:東京大学弥生講堂アネックス・セイホクギャラリー 今回の講演会は、皺の入った紙袋状の陶器、クリンクルシリーズを始めとして国内外でご活躍されているプロダクトデザイナーの小松誠さんに、スウェーデンで師事されたスティグ・リンドベリさんの作品について、またご自身の作品についての貴重なお話を伺いました。 リンドベリとグスタヴスベリ製陶所 小松さんは1970年より3年間、当時スウェーデン、ストックホルム近郊にあるグスタヴスベリ製陶所のアートディレクターだったスティグ・リンドベリの元でアシスタントとして働かれました。その後2006年に武蔵美術大学の在外研修でヨーロッパの陶芸家を尋ねる旅に出られ、その際に偶然開かれていたグスタヴスベリ製陶所でのリンドベリの展覧会と、その年にストックホルムの国立美術館で開かれたリンドベリの回顧展を巡られたそうです。それらの展覧会について豊富な写真と共に、アシスタントだった小松さんならではの視点から、作品にまつわるエピソードをお話し頂きました。 ![]() スウェーデンを代表するデザイナーであるリンドベリのユーモラスでほほえましい作品達は、抽象から具象までの幅広い表現力とフォルムの伸びやかさが印象的で、またセラミックという範疇に留まらない、装身具から衛生陶器、テキスタイル、絵本、TVまでの幅広い分野での自由な活躍に感銘を受けました。それ以外にもアートピースとして、一つのスケッチから自由に発展させて作る一品制作や、釉薬は何種類もの複雑な配合で再現不可能だった事など、強いこだわりによって生み出されていたそうです。そしてある時は歌を歌いながら、流れるようにスケッチを描き、人形を作りだしていたとのことでした。 リンドベリ自身がろくろが出来ない為、ろくろの出来るアシスタントを捜していた所に小松さんに白羽の矢があたった事や、釉薬は専任がいるという事等、日本のいわゆる陶芸家のイメージよりもプロダクトデザイナー的な仕事のプロセスや、グスタヴスベリでの人間関係や雰囲気等、作品をつくり出す工房の背景が垣間見られるお話もありました。 ![]() 続いて、作品の背景としても非常に興味深いリンドベリの暮らし方、特に茅葺き屋根が印象深い夏の家での豊かな生活を紹介して頂きました。また、同じくグスタヴスベリ製陶所で活躍され、日本でも人気の高いリサラーソンの夏の家を尋ねられた時の写真もお見せ頂き、サービス精神旺盛で茶目っ気がある、作品にも滲み出るお人柄のお話、小松さんが3年間いた中でリンドベリがデザインしたテーブルウェアの新製品は1シリーズのみと、じっくりと取組む新製品開発への姿勢も興味深いものでした。 ![]() ![]() 小松さんの作品について その後、小松さんがスウェーデンから帰ってご自身の作品を次々と生み出した経緯をお話し頂きました。 帰国後初の作品は、「手のシリーズ」という、色々な器物に手をつけてみるという作品でした。ヨーロッパは”耳”と呼ばれる器の「取手」を本当の「手」の形にしてくっつけた、ことばあそびのようなユーモアある作品ですが、ご自身では楽しかったけれどリンドベリとの繋がりが強すぎるように感じて、この後シンプルで面白いプロダクトデザインに興味を移して行くようになったそうです。 鋳込みという技法 安くつくる為に使われる事の多い、型を使った「鋳込み」という技法を、表現の為に使ってみたいと長い間考えていた中、1975年に初めて紙袋をつかって型を作ったものがクリンクルシリーズの始まりだそうです。陶器は窯の中でゆがむ弱点があるが、皺の袋の場合歪めば歪む程面白くなることから、弱点を活かす視点でもあるとの事でした。 美しく仕上げる為に手の跡を残さない様、仕上げが大変だった事、作り替える度にしわが過激になって行き、最も新しいものはホームセンターの紙袋で型を取った等の裏話が伺えました。クリンクルシリーズはMOMAを始めとし世界の様々な美術館に収蔵されており、陶器のみに留まらず、ガラスにも応用され様々なバージョンがつくられています。 ![]() 紙と陶器、紙とガラス、という「異素材」の出会いによってつくられている事、既にあるもの、それもスーパーで手に入れられる紙袋に偶然に生まれた皺が表情を生むという、作り手が手跡を消して使い手に差し出される作品である事、自然な佇まいが高度な技法によって実現されている事等、小松さんのデザインへの考えをクリアに象徴する、まさに代表作であると感じました。 同じシリーズのグラスはベストセラーでMOMAのパブリックコレクションで、氷を入れてゆらした時、氷とグラスの角があたってとても良い音がして振動が伝わってくる、とのお話にグラスが生む時間の鮮やかさが思い浮かびました。最近はこの延長として「地球の皺」というエベレストを写し取った壮大さがほほえましいシリーズを手掛けられているそうです。 異素材と使い手による組み合わせ 異素材の組み合わせに興味があり、ガラスのフラスコにゴムのマドラーがついた「マール」や、陶磁器と異素材の組み合わせとして国際陶磁器展美濃’86グランプリ受賞の注器「POTS」、その他にも酸化金属を錬り込み研磨したマーブルの磁器を台座にしたグラスなど、考え抜かれたハプニングと素材間の緊張が美しいプロダクトが紹介されました。 また、使い手が使い方を発見する、使い手と一緒に形をつくるプロダクトとしてデザインされたドアノブは、季節や気分によって異素材の組み合わせを楽しめるもので、500位ものバリエーションが出来るそうです。漆器との組み合わせの「カップキット」や、既製品との組合せで新しい用途を生む最近作にもユーザーとつくるデザインの豊かさが現れていました。 限りなく無に近づく 最後にこれからの展望という質問に対して、小松さんは、私達は新しいものをつくりすぎてきた、より少なくて良いものを、さらに焼物の装飾はものを付け加えて行く事ですが私は減らしていくような陶器をつくって行きたい、素材の量を少なく熱エネルギーを減らす陶芸をつくって行きたい、と話されました。KUUシリーズに見られるように、極限まで無に近づくなかで生まれている形にはさらに飛躍した創造性が感じられて、発展し続ける小松さんの今後の作品が益々楽しみになりました。 貴重なご講演、本当にありがとうございました。 ![]()
by sadiinfo
| 2012-10-26 13:05
| 講演会
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