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2012年 08月 21日
![]() SADI定例講演会 「フィン・ユールの建築と家具のデザイン」 ~国連ビルと自邸の家具のデザインとインテリア 講師:島崎 信 氏(武蔵野美術大学名誉教授・当協会理事) 吉村 行雄氏(写真家・当協会理事) 日時:2012年7月20日(金)18:30~21:00 会場:工学院大学 高層棟28階・第一会議室 [第一部・島崎氏講演] ![]() 島崎氏がフィン・ユールに魅せられたエピソードとフィン・ユールについて調査された数々の想いについてお話がありました。その後、吉村氏が撮影されたフィン・ユール邸の映像が流されました。偶然が重なり、運命的な出逢いが待っていたようです。 ■北欧デザインに惹きつけられる 島崎氏は、東京芸術大学2年生の1953年の秋、日比谷の進駐軍の図書館でアメリカの「プログレッシブ・アーキテクチュア」誌や「インテリア」誌などに国際連合本部ビルのインテリアが掲載されていたものに惹きつけられました。とりわけ、信託統治理事会会議場のインテリアに強く惹きつけられ、ここに島崎氏と「デンマークの建築家フィン・ユール」との出逢いがありました。 ![]() ■デンマーク王立芸術アカデミー 島崎氏は、1958年日本政府の海外デザイン研究員資格に合格され、フィン・ユールとハンス・ウェーグナーのデザインにあこがれ、「デンマーク」の王立芸術アカデミーの建築科家具研究室の研究員の一人として貴重な経験をされました。 当時のデンマーク家具のデザインの主流は、①人体の寸法測定による生活に最適な家具寸法の追及、②伝統的な木工マイスター制度の中で確立した家具構造及びその政策方法の遵守、③エジプトやイギリス等の伝統的な様式家具の研究を基礎に今日の製造技術と生活を適合するようにリ・デザインするという姿勢にあったとお話がありました。 ■フィン・ユールとの出逢い 1958年12月に王立芸術アカデミーの教授に引率されて、多くの建築家やデザイナー、クラフトマンが集う年末パーティーへと向かい、そこでフィン・ユールを紹介されました。 ![]() ■建築家としてスタートしたフィン・ユール フィン・ユールは1912年にコペンハーゲン市の裕福で知的な家庭に生まれました。18歳の時に、グンナール・アスプルンドによるストックフォルムの展示会で、日常生活の建築を基盤とする主張に影響を受け、王立芸術アカデミーの建築科に入学しました。フィン・ユールは卒業後就職した建築事務所の在職中にコペンハーゲン空港の管理棟や、ラジオ局の音楽ホールの建築で注目を集め世界的に有名になりました。 ■異端の家具デザイナー フィン・ユールは、エジプトの家具の力強さに影響を受けつつ、座り心地のための寸法を探りながら図面を起こすというアプローチでデザインを進めていきました。 1945年にコペンハーゲンの中心部に事務所を設立したのはフィン・ユールが33歳の時でした。生まれ育った地区に、インテリアスクールを開設して校長となり、10年間教育にも携わっています。 フィン・ユールは、空間、生活、照明、床や、壁のテキスタイルと家具の調和を求めることがインテリア・デザインにとって重要であると伝えています。 島崎氏は、フィン・ユールのことを調べてゆくうちに『彼は単にシェルターをつくる建築家ではなく、単なる家具のデザイナーでもなかった。美術史家を志す目を持った、生活空間のトータルデザイナーといえば適当な表現になるかもしれない』との感想を持たれました。 ■アメリカでの活躍 フィン・ユールは1946年デンマークの陶器会社のビング・オ・グレンダール社のデザインコンサルタントとなり、1950年には国連ビルの信託当時理事会会議場のデザイナーに指名され、1951年にはアメリカ有数の家具メーカーであるベーカー・ファニチュア社でデザインを担当していました。 1953年には、スカンジナビア航空(SAS)の世界33都市の営業所の展示インテリアとともに、新機種DC-8の機内のデザインも行っています。 ■フィン・ユールが活躍した理由 島崎氏がフィン・ユールについて調べてゆくうちに、30代の若いデザイナーが世界の大舞台でこれほど活躍できたのには次の偶然があるのではないかと話されました。 『人間にはその人の力だけではどうしようもできない「運」というものがあり「時代にめぐり逢えた運の強さ」、そして、人と人のつながりがフィン・ユールに微笑んでいる「人に出逢えた縁」そして、人に愛され尊敬される人柄であったことが才能をさらにひきだすことができたのであろう』 ■フィン・ユール邸を訪ねる フィン・ユール邸は、1942年30歳の時に自ら設計した白く塗られた平屋の簡素なものでした。島崎氏は、フィン・ユール邸に3回程訪れられ、日本の建築やデザインについて興味を持たれていたフィン・ユールと実際に会話をかわされ、興奮の気持ちでいっぱいだったと感想をお話しされました。 ■「生活者の視点」の大切さ 島崎氏は、生活をするために欲しいと思う家具を、生活のトータルの場で調和を考えてデザインをしたと言われるだけに、どの家具も各々の個性が輝いていながら、あるべきところにあるという美しいハーモニーを見せており、日常に使う「生活者の視点」がいかに大切かと考えられたとお話しされました。 [第二部・吉村氏講演(スライドレクチャー)] ![]() □フィン・ユール邸の映像から 1942年、フィン・ユールが設計した自邸は、コペンハーゲン郊外のオードロップゴー美術館の敷地に隣接しています。「生活者の視点」からデザインされた室内には、フィン・ユールがこの家のためにデザインした家具が随所に置かれ、収集した数々の美術品が飾られています。 吉村氏は、オードロップゴー美術館へ数日の撮影許可を得て撮影を進められ、朝方から夕方まで光の異なる室内の撮影を行いました。撮影時には美術館員の付き添いのもと進められたと伺いました。美術館の小道からフィン・ユール邸まで、緑の木がそよ風に揺れている、そこに自分が立っているかのように感じられた映像から始まりました。 フィン・ユール邸の外観、オフィス、テラス、リビングルーム、玄関、寝室など部屋の説明を交えながらその映像が流されました。特に印象に残っている映像は、高低差のある二つの棟をつなぐガーデンルームのガラス越しに庭園が広がり邸内の緑とつながっているように感じました。部屋の天井の色がからし色である部屋があり安心感を与えるとの説明がありました。また、夜の明かりが点り、外から見た白いフィン・ユール邸がピンク色を醸し出していてとてもすてきでした。 映像の中の太陽の光は、板張りの床や絨毯が光を吸収しているため光が柔らかく感じられました。フィン・ユール邸の家具の配置は整理され計算された配置であるとのお話がありました。人の動線が考えられた機能的な配置であることがわかりました。吉村氏の、映像が1枚1枚額縁にいれて飾りたくなるような素敵な映像(写真)でした。 <以下吉村氏のスライドより> ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 終わりに~ フィン・ユール邸の棚に並べられた美術品は等間隔に配置されていました。これは、以前の講演会「北欧デザインの根を考える/フィンランド編」の中で、等間隔に距離を保ってバスを待つ北欧の人の感覚に似ているように感じました。日本の生け花の世界でいわれる“粗密のバランス”と異なり、『等間隔のバランス』が北欧には存在するのではないかと思いました。また、そのバランスがとても新鮮で素敵に見えました。 フィン・ユールがデザインした椅子に実際座らせていただき、いたるところの曲線がとてもさわり心地がよかったです。椅子の高さが少し低めなことから腰が奥まで収まり、くつろぐための休息の椅子であることがわかりました。そして、椅子脚部の底面積が小さく無駄にほこりを寄せ付けない、実用的なデザインであることもわかりました。 フィン・ユールが歩んだ建築やデザインへの道、島崎氏がフィン・ユールと出逢うきっかけとなったいくつかのエピソード、そして、吉村氏が訪ねたフィン・ユール邸の映像で1本の映画が完成するのではないかと思い“わくわく”しながら講演会を拝聴させていただきました。ありがとうございました。 ![]() ![]() [文責:高津真由美]
by sadiinfo
| 2012-08-21 08:48
| 講演会
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