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2012年 04月 17日
SADI定例講演会「北欧モダニズム建築とそのルーツ-北欧らしさを紡ぎ出した人々」 講師:伊藤大介氏(東海大学国際文化学部教授) 日時:3月23日(金)18:30~20:30 会場:東京大学弥生講堂アネックス・セイホクギャラリー 今回の講演会では、西洋建築史/特に近代の北欧建築史を専門とされ、北欧の建築、都市等の研究をされておられる伊藤大介先生をお迎えして『北欧の建築遺産』 (河出書房新社)の内容に寄り添ったお話を伺いました。 北欧の近代建築のキーワードとして「自然とのつながり」、「ランドスケープと共にあること」を挙げられ、またその中でもアールト,アスプルンド,ヤコブセンというそれぞれの巨匠に代表される自然観の違いに着目していることを述べられました。そして過去の建築を様々な形で"継承"することで形作られた北欧モダニズム建築の魅力のルーツを、その文化的背景、建築から都市まで、様々な実例/実体験を通してお話し頂きました。 今まで歩いてみた北欧 北欧は田舎歩きが楽しく、是非地方を訪れて欲しいとのお話通り、北欧建築の基盤となった地方に点在する魅力的な教会、都市の写真を拝見しながらその文脈を解説頂きました。 テュルヴァーの石造教会 湿地に佇む姿が地域の心の拠り所であるテュルヴァーの石造教会、砦であり教会である歴史を語る堅牢なエステルラースの教会、ヴァイキング時代の聖地が教会に受け継がれるウプサラの墳墓群と教会など、それぞれの地域でキリスト教化以前の文化的背景・ランドスケープのレイヤーの上に教会建築が生み出された様子が語られました。 そして都市についても“継承”が見られ、木造ログハウスの街並が北欧都市の原点である事を今に伝えるポルヴォーや、海運によって始まった都市の構造を受け継ぐオーレスン等が挙げられる事、また建築の技術に於いても、ヴァイキングの文化と造船技術を色濃く映し出すボルグンの木造教会、民家の技術であった木造ログ構法を発展させたソダンキュラの教会など、伝統の継承の先に建築が開花した様子を紹介頂きました。 アールトの原点となった中央フィンランド地方 地理的にスウェーデン、ロシア等国外からの影響が最も届き難い地方である中央フィンランドは陸の孤島として独自の建築を多く有し、この地方出身である若いアールトが賞賛し、大きな影響を受けたそうです。文明化で失われた自国文化への憧憬とロシア等周辺国からの圧迫から、フィンランドらしさが自問され、ナショナルロマンティシズムが興る中、その探求が向かったのは中央フィンランドの周囲から隔離された原生林と、簡素なログ構造、そこでの自然回帰のライフスタイルだったとの事で、その運動の中心的存在である画家ガッレン=カッレラの森の住宅「カレラ」こそフィンランド近代建築の原点であるとお話しされました。 カレラ “原生林”から“郊外”の自然へ 「カレラ」以降のナショナルロマンティシズムの動きとして、20世紀に入る頃鉄道の発展に伴って、「フィンランドらしさ」が“郊外”—すなわち豊かな自然に居すると同時に都市とのつながりが持てるーで可能となり、「アイノラ」、「ハロセンニエミ」、「ヴィトレスク」等芸術家達の家がつくられたそうです。 またやはり近い時期にスウェーデン人の心の故郷であるダーラナ地方の農村地域に、画家のカールラーションの家がつくられました。一時期フランスで学んだラーションはここでアールヌーヴォーの影響を受けながらも、自然の中での住まい方の再構成によって新しい「スウェーデンらしいインテリア」を発見しているのではないか、という見方を示されました。 北欧モダニズムにも引き継がれた自然との近さ 以上述べた歴史的背景の影響、「自然とのつながり」、「ランドスケープと共にあること」が北欧モダニズムに共通する傾向であるが、アールトとアスプルンド、また(今回は述べないが)ヤコブセンという大きく3つの流れに代表される自然観・哲学の違いがあると考えているとして、以下のように述べられました。 アールト ・多作、環境と共に建築作品が変わる事を成長ととらえる ・棲み込む為の自然 自然=森に埋もれる事が究極のプライベートな空間 ・最終的に森の中の小住宅へ フィンランド人にとって森は安らぎの場所。森に下草がなく低い角度の光で奥まで照らされることで、爽やかに歩き回る快適な空間であることも影響しているのではないか。 これらを代表する完成度の高い作品としてマイレア邸、究極のプライベートな空間の例として夏の家がある。 マイレア邸 夏の家 アスプルンド ・寡作、完璧主義 ・愛でる為の自然 背後の岩山や建築に守られて、対象化された自然を眺める。意図された視線の方向性。 ・最終的には大きなランドスケープの構成へ これらを代表する自然を見事に利用した作品として夏の家、ランドスケープが決定的な役割を担う例として森の墓地がある。 夏の家 森の墓地 終わりに 北欧モダニズムの原点と想定出来るものとして 1)BAUHAUS、ヨーロッパモダニズム 2)前代の北欧建築、特にユーゲント期の建築 3)建築家アスプルンド自身 (北欧にとって始まりだが既に多くの要素を有している) 4)自然(今回の中のテーマ) 5)日本への意識 と考えているとまとめられました。 以上、北欧の建築・都市の発現から北欧近代に続く流れを、なかなか行けない地方の写真も含んだ豊富な資料で俯瞰するとても贅沢な講演を伺う事が出来ました。 「これぞ近代」といえるような唯一絶対の近代があるわけではない、「これも近代」といえる中に北欧モダニズムがあるという捉え方が可能になった、というお話が冒頭にありましたが、同様に「これぞ北欧モダニズム」があるわけではなく、それぞれの地域の自然・歴史の継承の線上に、フィンランドのアールト、スウェーデンのアスプルンドといった巨匠が存在し、彼らが具現化した個々の可能性との掛け合わせによって生まれた複雑かつ豊かな多様性が、北欧モダニズムの魅力を構成しているのかもしれないという感想を持ちました。また改めて地域の歴史と自然を丁寧に読み込み建築を紡いで行く北欧の建築に学ぶ事の多さを感じた夜でした。 (文責:池田雪絵)
by sadiinfo
| 2012-04-17 07:55
| 講演会
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