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2011年 07月 03日
![]() 総会記念講演「近代とアールト」 講師:平山達 氏(当協会理事・前会長) 日時:2011年6月11日(土) 14:45~16:45 場所:工学院大学28階 第4会議室 フィンランドの巨匠/アルヴァ・アールトのその独自なデザインの地平が、どのような時代状況の中から拓かれ、そして芽生えたのか。今期SADI総会に続いての平山達さんの記念講演は、アールトの個々の作品の特質に焦点を当てるのではなく、その特質が生まれる背景としての時代の状況の側に重心を置き、近代というさまざまに揺れる時代動向の中からアールトが新たな世界を察知し独自な道筋を拓くに至ったその要因について、多くの周辺事例を取り上げながら話しを進められた。 ![]() 最初に映されたスライドは、意外にも帝大生/山崎定信の卒業制作「Fish Market/魚市場」の意匠図。建築教育分野の呼称「建築学科」がまだ「造家学科」と呼ばれていた頃の明治24年(1891年)のもので、西欧の伝統様式に倣うそのデザインからはおよそ魚市場という機能的な活動場面は想像されない。平山さんがあえてそれをお話しの始めに選ばれたのは、西欧を中心とする建築の近代が、時代の空気を引き継ぐ感性(様式への昇華)と新たな時代への合理を求める志向との交錯と相克の中から拓かれて行くことを今回の論の主軸とし、そうした影響が遠隔の地・日本にもおよび、ましてやアールトが育つ北辺の国フィンランドもその強い影響下にあったことを示唆しようとされたのだったろう。 ![]() そこから展開する60点を越えるスライドは、おもに19世紀末から20世紀初頭の四半期に現れ、建築の近代を刻んださまざまな代表作群だ。 先に記しておきたいのは、それら事例の多くは教科書にも取りあげられよく知られるものであるけれど、平山さんはその多くの実際に足を運ばれ、創作の理念の背後にある存在の実感的印象を重ねて、ご自身の想像を巡らせる。それがとても新鮮だった。 今回進められたお話しの主要な視点は、近代建築が歩む過程での二つの軸、すなわち技術者たちが果敢に拓いてゆく新たな空間的な可能性と、時代の雰囲気(様相)を表象しようとする建築家たちの表現活動とを交互に据え、若きアールトの中にも投影されたであろうそうした時代の諸相を点検して行く。 ![]() 前述の山崎の作と同年に、ロンドン博覧会で建設されている壮大なクリスタルパレス(1891・J/パクストン)、一方ほぼ同時期に表現世界を大きく風靡したアール・ヌーボー(ヴィクトル・オルタら)の潮流。それらを手始めとして、産業革命以降の急速な技術的展開や工業化が開拓する空間世界とそこに統一した意味と表現を模索する建築家たちの取り組みを交互に取り上げながら、こうした二つのウエーブが20世紀初頭の四半期を越えてミースやコルビジェを代表とする現代建築の基盤に束ねられてゆくまでが語られた。 ![]() この四半期は、アールトが生まれ(1898年)青年期に至る時に当たる。建築家としてのデヴューも、こうした激しく揺れる時代動向の中からさまざまな養分を受けそれを咀嚼し自己化する中から果たされる。 建築家としての活動を始めた20代初期に取り組まれた諸作(今回取り上げられた事例としてはヴィラ・ヴァイノラやアイラ・アパートメント、そしてユヴァスキラの労働者会館)は古典的様式の倣いを強く持ち、それだけを単独に見ればおよそアールトの作とは思われない。そして20代後半のパイミオのサナトリューム、ヴィープリの図書館で、一気に独自の新世界を開く。 ![]() この大きな転換とその後の路線が、アールト自身の類まれな創造力と洞察力の中から果たされたことは誰もが認めるところながら、平山さんは今回多くの周辺状況を取り上げる中で、その展開がアールトという個人を越えた時代の持つ潜在力に大きく拠るところがあることを示されようとした。 人は時代に所属する。そして、時代が個人を貫く中から、新たな表現の視野も開かれる。「アールトと近代」と題する今回の講演は、アールトを軸としながらも、そうした広がりのある地平をもとに「デザイン」を考える貴重な時となった。 ![]() 本講演には予定を越えて多くの方が参加された。そのお話しの密度からは時間が足りなかったのが残念だ。また、綿密な平山解釈が後ろの席にまで伝わるためにはマイクの装備が必要だった。ぜひ再度の機会を期待したい。 (文責:益子義弘)
by sadiinfo
| 2011-07-03 14:06
| 講演会
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