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2011年 05月 08日
定例講演会 SADI会員限定企画「視察報告会」 1.スウェーデンのエコロジカル建築とその背景 …筒井英雄氏(当協会理事) 2.ストックホルム・ファーニチャーフェア2011 …川上信二氏(当協会理事) 2011年4月22日(金) ULUOSたまプラーザ(横浜市青葉区美しが丘) 今回はSADI会員に向けた限定企画として筒井理事,川上理事から、それぞれ視察報告会のかたちでお話をうかがいました。まず筒井氏からは、昨年10月に当協会及び日本建築家協会の後援のもとにスウェーデン・クオリティケア(SQC)が、その活動の一貫として実施した環境先進国スウェーデンへの研修ツアーから〈住環境の中におけるエコロジカルな問題がどのように対応されているか‥〉についての報告を、そして川上氏からは、今年60回目を迎えたストックホルム・ファーニチャーフェア2011に足を運んでのレポートを。 さらに巨匠アスプルンドの「森の葬祭場」に新たにつくられる火葬場のコンペ勝利者、建築家ヨハン・セルシング氏(Johan Celsing)を訪問しての報告、加えて雪景色の「森の墓地」や市立図書館,筒井氏の視察でも重要なレポート対象となったハンマビーショースタッド(Hammarby sjostad)などの画像を介しての魅力的なお土産話をお聴きしました。 ULUOSたまプラーザ ■1.スウェーデンのエコロジカル建築とその背景 …筒井英雄氏(当協会理事) 筒井氏は1964年から2年間、ストックホルムのArkitekter Engstrand och Speek AB(建築設計事務所)に勤務した経験があり、実際にスウェーデンにおけるハウジングの仕事,住環境の設計に所員としてたずさわりました。前述SQCから寄せられた研修ツアーの相談において、その具体的切り口としてのテーマをどうするか…。あらためて環境先進国への渡航視察に際し、大いに悩むところだったとのコメントが筒井氏からありました。 結果、建築家としての滞在経験を生かすことは勿論,一人の生活者としての体験から、ツアー参加者に対してスウェーデン社会を支える民度(市民の意識レベル)の高さ,行政との間の信頼関係,ひいては建築家で在る前に良き市民で在れとする意識のあり様というものが前提にある、成熟した市民社会というものの背景、そうした歴史や文化の積み重ねの上に今日に至る具体的エコへの取組みやシステムの実現、成果があるのだということの理解を促すことを要諦にツアーはおこなわれたと説明がありました。 そうした研修ツアーのプログラムの中から今回は、*実験住宅としてのパッシブハウス(戸建),*都心に近いエコヴィレッジ,*エコとエネルギー問題を踏まえた再開発モデルとしてのハンマルビーショースタッドの具体的3つの物件をとりあげ、視察レポートとして構成して頂きました。 パッシブハウス *パッシブハウスでは、まず何より低炭素の問題が第一にあるため、狭苦しさを視覚的に補完する工夫をしながら開口部を極力少なく、さらに510ミリという壁厚や3重ガラスを設けるなど無暖房住宅の完成度を高める一方で、屋上にソーラーパネルを設け、また地下5メートルに地熱を取り入れるためのパイプを埋設するなどの装置やシャワー使用時の温水熱など「熱交換の発想」によって生み出されるエネルギーで足りない分を補填するという考え方・システムにもとづいていることが説明されました。 こうした僅かなエネルギーをコントロールしながら無暖房住宅の精度を高めていくことにより、スウェーデンでは2020年までに炭素エネルギーに頼らないとする欧州連合の取り決めより早く、EUルール実現を目指しており、実験者の「人間そのものが熱源だ」とするコメントには、皮肉のなかにも取組みへの意気込みが感じられました。 エコヴィレッジ *エコヴィレッジですが、ストックホルムの中心から4キロの位置にあり、世界的にも極めて都心に近い立地が特性でもあります。エコロジカルな集団生活を営むにあたっての建物は44棟あり、各住戸には小ガーデン(菜園)が付いています。建物の周囲には生態系・環境保全のための機能としてビオトープがあり、水辺の景観としても魅力が感じられました。施設機能としては多目的ホール,調理場と食堂,子供の遊び場などが共同生活を支え、例えば各住人の食事当番は月に平均2回の割合であるなど効率的な生活背景が窺えました。 エコの原理原則であるリサイクルやリユースは、そのためのストックヤードがヴィレッジ内に設けられ、また腐葉土・堆肥づくりもおこなわれています。ここでは生活者の排泄物でさえ小便と大便とに分けて溜められ、大便はバイオガスとしてヴィレッジ内のパイプを通って利用され、小便は契約している有機農場の肥料となって活用されるなど思想の徹底が具現化されている姿を垣間見ることができました。ちなみにエコヴィレッジでの暖房は木材のチップを(暖炉で)利用することが主だとのことでした。 ハンマルビーショースタッド *ハンマルビーショースタッドにおいては、開発のコンセプトや経緯,建築の専門的角度からの分析と共に、スウェーデンの成熟した市民社会というものの背景に言及しつつ、「エコロジー」と「エコノミー」という表裏一体の問題についての提起をして頂きました。(詳しくはSDAIニュースをご覧ください。)海に面した同エリアは職住隣接の居住区として再開発される前は工業地帯でした。土壌を整備し水質を浄化してのランドスケーププラン、特にヒューマンスケールな親水性を備えた水辺の景観に配慮した街として生まれ変わりました。 集合住宅は6階建の建築が主体で、ガラス面を多用し過ぎた(ヒートロスの問題)との反省も聞かれますが、今般筒井氏が住宅について回想するに、その室内のスケールや内装などは、この50年間あまり変わっていない印象だとのコメントでした。つまり暮らし方,生活の仕方の基準そのものが、良い意味でほとんど変わっていないことが理由ではないかとの見解でした。すべての計画が完成すると3万人が暮らす街になります。 トラムをはじめ公共の交通機関が整備され、自転車のレンタルが充実。エコの思想から自動車については制限されており利用はカーシェアリングが原則、その機会としては週末に2〜3家族が一緒にまとめて買物をするなどです。但し、立地の特性を生かし拠点を結ぶ無料の連絡船(例:ガムラスタンまで行ける)が運行するなどボートとスウェーデン人の関係を示す個性的な一面が窺えました。 ハンマビーモデルとは、すべてが循環している仕組みのことともいえます。戻せるものは出来るだけ戻すという思想です。住戸からのゴミや下水がエネルギーとなって再生されます。例えば出たゴミはパイプによって繋がった、投げ入れるゴミ集めの装置によって、同エリアに設けられた5ケ所の処理施設に集められバイオガスへとリサイクルされます。下水処理場の機能は火力発電所と連動したエネルギー供給の仕組みになっています。 これからの世の中は「エコロジー」と「エコノミー」の両立が大きな社会テーマであり、日本が北欧社会に学ぶ要諦でもあると思います。そして、そのためには教育という必然的な課題が問われてくるわけですが、今日のスウェーデン社会が環境先進国といわれる由縁は、まさに幼児期からの環境教育にあるとの見解を筒井氏から頂きました。 例え厳しい冬でも3〜4歳から外で過ごさせる森のムッレ(自己責任の在り方も含め体験的に学ばせる野外教育)がスウェーデンの環境教育の基本であるということ。いかに自然と接することを大切にしているか、幼児期の自然との係わり方について大変興味深いお話をお聴きできました。やはり最も大切なのは環境にしても、エコについても、その教育であるとの強いご意見でありました。 東日本大震災は原子力発電所の問題を大きく社会に提起しました。このテーマは今日私たちが向き合っている文明が転換期を迎えようとしていることを示しているといっても過言ではないと思います。北欧諸国におけるエネルギー問題では、それぞれ国情がありますが、今後スウェーデンでは現在12基ある原子力発電所を全廃する方針が示されています。それを補うのは水力発電,木材チップを応用したバイオによるエネルギーの検討であるとのことです。 そして、いわゆる3Rのなかで,長く使い続けることが一番のエコであるとの意識の大切さを、あらためて見つめ直すとき、作ったものは壊さないという…平和への思いにも相通ずる価値観を、もっと私たちは持つべきだとの意見を頂き、悲劇の震災を通じ、せめて人々の助け合いの気持ち,思いやりの心が、やがて上から下への日本型タテ社会の構造を脱して北欧型のヨコ社会へと、イデオロギーも含めて向かっていくことを願いますとのご意見を頂くと共に、震災では多大なる犠牲と被害が出ました。期せずしてタイムリーな企画となりましたが、被災された方々には心よりお見舞い申し上げますとお気遣いの言葉で結んで頂きました。 ■2.ストックホルム・ファーニチャーフェア2011 …川上信二氏(当協会理事) 川上氏は1960年代のスウェーデンに学び、ご家族での生活拠点をストックホルムにお持ちでした。その後も深い縁(えにし)のもとに同国との親善とインテリアデザインの発展にご尽力されてきました。今年60回目を迎えたストックホルム・ファーニチャーフェア2011の報告は、そうした川上氏ならではのストックホルムへの親しみと眼差しから語って頂きました。 特に長年の現地の友人やデザイナー仲間、業界の関係者からの生情報や作品の評判、感想など交えての説明・レポートは、撮影されたスナップ写真と相俟って臨場感を醸し出しておりました。 さて、ご参考まで欧州の家具フェアは、1月のドイツはケルンと仏国のパリ,2月のコペンハーゲン,そして世界的な規模へと発展した4月のミラノサローネなどが有名ですが、北欧の有名家具ブランドが一堂に会するストックホルムのフェアも1951年からの長い積み重ねがあり、北欧家具の魅力を伝えるに相応しいフェアであるとのコメントでした。 (文責:企画担当 青柳一壽)
by sadiinfo
| 2011-05-08 18:10
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