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2010年 09月 30日
定例講演「集成材建築100年」~西欧から北欧へ~ 講師 雨宮陸男氏 (国際木質文化研究所 所長・当協会理事) 2010年9月17日(金) 東京大学農学部 2号館121号講義室 当協会理事の雨宮氏は、国際木質文化研究所の所長を務められ、日本に於ける「集成材建築研究」の第一人者です(ちなみに「集成材は主要な建築材料」という認識のもと、「集成材建築」という言葉を日本で初めて用いたのも雨宮氏であるそうです)。 今回は、協会事務局として奔走されるいつものお立場を変え、築70余年を数える東大農学部校舎の格調高い木製の演壇にて、ご専門の「集成材建築」について、西欧から北欧の域を超えて広くおはなし頂きました。 集成材は、1800年代にヨーロッパでは、石造建築をヒントに細分化された木片をクサビやカンヌキで再構成した成形材を意匠材として用いたものが、積層技術と接着剤の進化と共に、1900年代初頭に構造材としても用いられるようになった歴史があるのだそうです。 1906年、ドイツ人のオットー・ヘッツアーが、挽板(ラミナ)をガゼイン型接着剤で積層した湾曲集成材の部材をくさびで止め、大きな材料を作る集成材梁の特許を取得。 ヘッツアーの開発したシステム―引張・圧縮の力が掛かる部位には芯材を用い、応力が掛からない部位には辺材を用いる―は、100年を経た現在もラミナレイアップの原理として変わらず、当時から完成度の高いものであったことがわかります。 それよりもさらに遡リ、日本では、木材が枯渇し長く太い材の入手が困難だった1700年代に東大寺の建立にあたり太い柱が必要となり、合成柱(16角形の真柱の周囲に捌木材を寄り合わせ膠で固めた柱)の手法が用いられたそうです。 木材を曲げたり貼ったりする加工法は、世界中でも決して新しい技法ではなく、技術の誕生と発展は時代背景と密接な関係にあることを改めて実感します。アメリカでは、1930年代に断面設計にかかわるラミナの合理的配置、耐火性能の研究など、集成材研究が数多く行われ、日本も影響を受けたそうです。 北欧では、ストックホルムオリンピック(1912年)が開催された時代にヘッツアーの技術が渡り、戦中の物資や兵隊の確実な輸送手段であった鉄道関係の建物を中心に、1920年代頃から大規模建築が建てられ大きく発展した経緯があるそうです。 建設当時のすがたを今も残す、ストックホルム中央駅(1925年)やマルメ駅(スウェーデン・1922年)など、様々な集成材建築の写真をご紹介いただきました。(白い空間が印象的なストックホルム中央駅ですが、白色の防火塗料が塗布された集成材現しの建築だったとは!) ストックホルム中央駅 マルメ中央駅構内 1940年代に北欧の気候にも耐えうる接着剤が開発されたことなどを伴って、現代建築に於いても集成材建築は花ざかり。こと、雨宮氏のご専門のノルウェーに於いては、バイキング船をひっくり返したようなかたちの架構のスタジアム、オーロラを模した架構のスタジアム、飛行機が飛び立つイメージを模した架構の空港など、鉄骨トラスの様に軽やかなものから、幾重もの木片が層をなす「マッシブ集成材」でできたコンクリート塊ようなのボリューム感をもつ展望台まで、バラエティに富んでおり、集成材建築の幅の広さ、可能性の大きさが伺えました。それぞれの写真からは、鉄ともコンクリートとも違う、木という材料が醸し出すあたたかみが感じられました。 雨宮氏がプロデュースされた南条小学校(福井県・2004年)は、サッカー場6面もの広さのスウェーデンの植林地から伐り出された樹齢70~100年の樹木が大量の集成材と形を変え、アーチ梁や、大断面の柱梁となって豊かな空間を生み出しています。「適切な管理によって、人間の生命を超え、樹齢と同じほどの時間を刻みうる建物を作る」という使命が関係者に育まれていたそうです。 「時間をかけて成長した貴重な資源を用いるならば、時間をかけて手間をかけて加工するのが本来あるべきすがた」という雨宮氏の集成材・集成材建築に対する思いを伺うと、きれいに成形された集成材からも、無垢材と変わらない木の息づかいが感じられる様な気がします。 講演の様子 おはなしの中では、1910年代の「形而学下の構造に対する形而学上からの批判(後藤慶二)」や1940年代の「木造モダニズムに対する解答(丹下健三)」なども取り上げられ、「構造」と「建築」の関係について言及されました。 「構造を造るものは知識にして、建築をなすものは心なる」と示された時代から100年を経て、折しも日本では林業再生を図るため、「公共建築物等木材利用促進法」が施行目前まで来ています。公共性の高い建築に、国産材・海外産材・無垢材・集成材で作られた構造空間が数多く見られる日も遠いことではなさそうです。 ドイツでは集成材建築の構造システムと反力の例が図で示されたハンドブックが発行され、これがデザイナーや学生たちの構造の基本的な知識に寄与しているとのことでした。語弊を恐れずにいうと、日本の建築教育に於いてこれまで木造は比較的軽んじられてきた印象を受けますが、これを契機に、建築をなす心に寄り添うような知識が身につく木造建築教育がなされることを期待したいと思います。 集成材建築を中心とした内容の濃いおはなしは、木造建築について改めて思いを巡らせるよき端緒となりました。雨宮さん、ありがとうございました! 最後に、南条小学校の構造システムを雨宮氏と共同で開発された明治大学・野口研究室ほか、関係者の皆さまなどにも多くお集まりいただき、活気のある講演会となりましたことをお礼申し上げます。 (文:SADI会員 五百川真里恵)
by sadiinfo
| 2010-09-30 11:40
| 講演会
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