水島信氏 講演会レポート

水島信氏講演会| 第一部『ロマンティック街道の街づくり』
第二部『アルヴァー・アアルトの住居観と住空間』
2009年11月13日（金）　工学院大学28階第一会議室

去る定例講演会は，当協会にとってもはじめての試みとなる工学院大学との共催による講演会でした．講師にドイツ・バイエルン州建築家協会会員でもいらっしゃいます，建築家の水島信氏をお迎えし，二部構成での講演会を開催しました．

第一部は主に工学院大学の学生さん向けの講演でしたが，第二部からは通常通り一般やSADI会員の方にも多数ご参加頂きました．会場はいつもの第一会議室が最前列から最後列まで受講者で埋まり，近年にない盛況ぶりでした．いつもの定例講演も毎回このくらい埋まると良いのですが…．

さて久しぶりにアールトの話が聞けるとあって，筆者も第二部より参加させて頂きました．
水島氏によると，アールトの作品はカウントの方法にもよるそうですがおよそ782件あり，そのうち住宅作品が227件あるといいます．

そうしたアールトの住宅群を時代と作風によって分類し，アールトの住宅作品に流れる系統的な作風の変化を，論理的に解き明かしてゆく氏のお話にはとても説得力があり，アールト作品の多くに足を運び，実際に調査してまわった氏ならではの分析は非常に興味深いものでした．

時にアールトは自身の作品について多くを語らず，我々がアールトを語る際にはそのミステリアスな魅力のためか，それを正面から批評する言葉を私は聞いたことがありませんでしたが，氏の実際に空間に足を運び，その中で見えてきたアールトの空間における破綻や失敗の数々，それを裏付ける分析手法は実に客観的で批評精神を感じさせるものでした．

なんとなくわかったつもりでいたアールトの魅力に，また違った角度から光を当ててくださった水島氏の講演には目から鱗が落ちる思いでした．また機会がありましたら，アールトの住宅以外の作品群についても，氏の所感と分析を聞いてみたいと思います．
水島先生，貴重なご講演誠にありがとうございました．

（担当：関本竜太）