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2011年 06月 06日
講師:イェンス・イェンセン氏(デンマーク大使館 文化・報道・広報担当官) 日時:2011年5月20日(金) 場所:東京大学弥生講堂アネックス・講義室 新年度がはじまり第1回目の講演会が、5/20(金)に東京大学アネックスにて行われました。今回はデンマーク大使館にて文化・報道・広報を担当されているイェンス・イェンセンさんを講師にお迎えし、ご自身で活動されているデンマーク式家庭菜園(コロニヘーヴ)についてのお話を伺いました。 イェンセンさんはデンマークの建築やデザインにも明るい方ですが、料理やライフスタイルといった北欧人としての自然観や生活観ついて、ご自身の活動を通して実践されていることがとても興味深く、今回はデザインや建築そのものというより、ライフスタイルを中心に講演をしていただくことで、今までとは違うアプローチを試みたいと思いました。 コロニヘーヴとは? コロニヘーヴはデンマーク語でコロニー(集合)、ヘーヴ(庭)が掛け合わされてできた言葉で「お庭のコミュニティ」という意味です。都会に暮らす人々が、週末の余暇を過ごすための場所であり、野菜や植物を育てたり、芝生やりんごの木植えて庭を楽しむなど、使い方は人それぞれ。日常生活の中で、自然と触れ合う時間を大切にするデンマーク人にとってコロニヘーヴは大切な意味を持っています。 デンマークのコロニヘーヴ デンマークではコロニヘーヴの歴史は古く、貧しい人々のための農地として市が土地を貸し出すことからはじまり、コロニヘーヴ法という法律も存在します。別荘としての使用はできませんが、使用目的を菜園とすることで料金も格安で借りることができます。土地は市から提供されますが、小屋の売買は可能です。今では人気がある場所は何年も空き待ち・・ということもあるようです。 小屋つきの庭 芝生の中に生えているリンゴの木 例えば、コペンハーゲンから約1時間程度の距離にコロニヘーヴ団地があります。1区画約400㎡程度の土地に40㎡程度の小屋が付いています。「小屋付家庭菜園」なので、あくまで主役は「庭」であり、小屋はおまけです。小屋はダイニングキッチンと寝室がついている程度のシンプルな空間が多く、5月~10月は小屋に宿泊することも可能で、家族みんなで週末を過ごすこともできます。小屋はもともとあったものをそのまま使う人もいれば、自分でDIYしながら手を入れることも楽しみの1つ。若い建築家はこの小さな小屋をデザインすることを最初の仕事にすることもあるのだとか。 宿泊するための生活道具。内装や棚などはDIYでつくるのも楽しみの1つ 週末を過ごすための小さな楽園。そこでは人と人のふれあい(ヒュッゲ)が自然に生まれ、同じコロニヘーヴの仲間同士親しくなることも多いようです。九州よりも小さなデンマークの国土。コペンハーゲンにはアパート暮らしの人が多く、庭のある生活を望むことは難しいのが現実です。都会の住宅事情の中で、郊外の庭に心の拠り所を見出すこのシステムはデンマーク人の生活観や自然観をよく表しているような気がします。 江之浦コロニヘーヴプロジェクト イエンセンさんは2007年から神奈川県の江之浦にコロニヘーヴをつくるプロジェクトをはじめています。江之浦はかつてみかんの産地として名を馳せた場所でしたが、オレンジの自由化によって今はみかん畑としての機能は失われています。イェンセンさんは荒地になっていたこの土地を借りてコロニヘーヴをつくりはじめました。 地主の高橋さんはイェンセンさんの活動の最大の理解者で、仲間内では大王様というあだ名がついているほど。イェンセンさんの活動は雑誌やTVなどにも紹介され、今では江之浦コロニヘーヴに興味のある人々が日本全国から訪れるようになり、その活動の輪が広がっています。 江之浦コロニヘーヴにある小屋 横にはピザの窯もあります 敷地内にある15㎡ロフト付きの小屋はイェンセンさんの手作り。屋根には屋上緑化を施し、電気やガスはありません。興味深いのは小屋の内装につかっているのはみかん箱の廃材。土地の倉庫に眠っていた大量のみかんの箱を再利用し、資源を無駄にせず、この土地の持つ歴史へのオマージュとしてあえて手間をかけた内装を施すことにしたそうです。江之浦のコロニヘーヴにはそんな物語がたくさんあります。 小屋の内装はみかん箱を再利用してDIYで貼ったもの 地域の活性化を目指して イェンセンさんはコロニヘーヴをつくることで、地域の活性化ができないものかと考えています。2010年には日本コロニヘーヴ協会を立ち上げ、社会活動としての基盤づくりをはじめました。地方の過疎化が進む中、都会にいる人々を地方に呼ぶしかけをつくることで、その土地のよさを生かした再生構想は地域活性化運動の1つの可能性を示しています。週末に都会の人がやってきてくれることが荒地を再生するきっかけになる。これからのイェンセンさんの活動に期待したいものです。 デンマークのエネルギー政策 この講演会を企画している最中に起きた東日本大震災。この歴史的災害は私たちの日常生活に大きな影響を与えています。特に原発の問題はこれから世界のエネルギー問題を考える上で重要なテーマの1つです。今回北欧ライフスタイルを学ぶテーマの中で、臨時ではありますがイェンセンさんからデンマークのエネルギー政策についてのお話を伺うことができました。 母国のデンマークでは2020年までエネルギーの60%をクリーンエネルギーとし、2050年には100%まで引き上げる構想がはじまっているそうです。ただエネルギー問題を語る上で最も大切なことはそれを使う人間の意識です。今までの便利な暮らしとエネルギーの関係を再度見直してみることもこれからは必要なことなのかもしれません。「日本は何処に行っても照明が明るすぎますね!」イェンセンさんのこんな言葉がとても印象に残りました。 講演会はイェンセンさんの気さくなお話が幸いして、会場からはたくさんの人から質問や意見があがり、イェンセンさんとの対話するようなかたちで進んでいきました。まるでイェンセンさんの家に来てお話を聞いているようなそんなリラックスした雰囲気があり、講演会終了後の懇親会でも話題が尽きることがなく、とても楽しい会になったと思います。 今回の企画を通して、北欧の建築・デザイン、また暮らしに対する考え方を学びながら、今の時代に必要な情報を会員に向けて発信していくことがこれから益々大切であることを認識できたような気がします。イェンス・イェンセンさん、本当にありがとうございました! イェンス・イェンセンさんの活動はこちらのホームページでご覧いただけます。 日本コロニヘーヴ協会 http://www.kolonihave.com/ Tak for mad ! 北欧ライフ http://takformadblog.blogspot.com/ (文責:企画担当 坪井当貴) #
by sadiinfo
| 2011-06-06 09:11
| 講演会
2011年 05月 08日
定例講演会 SADI会員限定企画「視察報告会」 1.スウェーデンのエコロジカル建築とその背景 …筒井英雄氏(当協会理事) 2.ストックホルム・ファーニチャーフェア2011 …川上信二氏(当協会理事) 2011年4月22日(金) ULUOSたまプラーザ(横浜市青葉区美しが丘) 今回はSADI会員に向けた限定企画として筒井理事,川上理事から、それぞれ視察報告会のかたちでお話をうかがいました。まず筒井氏からは、昨年10月に当協会及び日本建築家協会の後援のもとにスウェーデン・クオリティケア(SQC)が、その活動の一貫として実施した環境先進国スウェーデンへの研修ツアーから〈住環境の中におけるエコロジカルな問題がどのように対応されているか‥〉についての報告を、そして川上氏からは、今年60回目を迎えたストックホルム・ファーニチャーフェア2011に足を運んでのレポートを。 さらに巨匠アスプルンドの「森の葬祭場」に新たにつくられる火葬場のコンペ勝利者、建築家ヨハン・セルシング氏(Johan Celsing)を訪問しての報告、加えて雪景色の「森の墓地」や市立図書館,筒井氏の視察でも重要なレポート対象となったハンマビーショースタッド(Hammarby sjostad)などの画像を介しての魅力的なお土産話をお聴きしました。 ULUOSたまプラーザ ■1.スウェーデンのエコロジカル建築とその背景 …筒井英雄氏(当協会理事) 筒井氏は1964年から2年間、ストックホルムのArkitekter Engstrand och Speek AB(建築設計事務所)に勤務した経験があり、実際にスウェーデンにおけるハウジングの仕事,住環境の設計に所員としてたずさわりました。前述SQCから寄せられた研修ツアーの相談において、その具体的切り口としてのテーマをどうするか…。あらためて環境先進国への渡航視察に際し、大いに悩むところだったとのコメントが筒井氏からありました。 結果、建築家としての滞在経験を生かすことは勿論,一人の生活者としての体験から、ツアー参加者に対してスウェーデン社会を支える民度(市民の意識レベル)の高さ,行政との間の信頼関係,ひいては建築家で在る前に良き市民で在れとする意識のあり様というものが前提にある、成熟した市民社会というものの背景、そうした歴史や文化の積み重ねの上に今日に至る具体的エコへの取組みやシステムの実現、成果があるのだということの理解を促すことを要諦にツアーはおこなわれたと説明がありました。 そうした研修ツアーのプログラムの中から今回は、*実験住宅としてのパッシブハウス(戸建),*都心に近いエコヴィレッジ,*エコとエネルギー問題を踏まえた再開発モデルとしてのハンマルビーショースタッドの具体的3つの物件をとりあげ、視察レポートとして構成して頂きました。 パッシブハウス *パッシブハウスでは、まず何より低炭素の問題が第一にあるため、狭苦しさを視覚的に補完する工夫をしながら開口部を極力少なく、さらに510ミリという壁厚や3重ガラスを設けるなど無暖房住宅の完成度を高める一方で、屋上にソーラーパネルを設け、また地下5メートルに地熱を取り入れるためのパイプを埋設するなどの装置やシャワー使用時の温水熱など「熱交換の発想」によって生み出されるエネルギーで足りない分を補填するという考え方・システムにもとづいていることが説明されました。 こうした僅かなエネルギーをコントロールしながら無暖房住宅の精度を高めていくことにより、スウェーデンでは2020年までに炭素エネルギーに頼らないとする欧州連合の取り決めより早く、EUルール実現を目指しており、実験者の「人間そのものが熱源だ」とするコメントには、皮肉のなかにも取組みへの意気込みが感じられました。 エコヴィレッジ *エコヴィレッジですが、ストックホルムの中心から4キロの位置にあり、世界的にも極めて都心に近い立地が特性でもあります。エコロジカルな集団生活を営むにあたっての建物は44棟あり、各住戸には小ガーデン(菜園)が付いています。建物の周囲には生態系・環境保全のための機能としてビオトープがあり、水辺の景観としても魅力が感じられました。施設機能としては多目的ホール,調理場と食堂,子供の遊び場などが共同生活を支え、例えば各住人の食事当番は月に平均2回の割合であるなど効率的な生活背景が窺えました。 エコの原理原則であるリサイクルやリユースは、そのためのストックヤードがヴィレッジ内に設けられ、また腐葉土・堆肥づくりもおこなわれています。ここでは生活者の排泄物でさえ小便と大便とに分けて溜められ、大便はバイオガスとしてヴィレッジ内のパイプを通って利用され、小便は契約している有機農場の肥料となって活用されるなど思想の徹底が具現化されている姿を垣間見ることができました。ちなみにエコヴィレッジでの暖房は木材のチップを(暖炉で)利用することが主だとのことでした。 ハンマルビーショースタッド *ハンマルビーショースタッドにおいては、開発のコンセプトや経緯,建築の専門的角度からの分析と共に、スウェーデンの成熟した市民社会というものの背景に言及しつつ、「エコロジー」と「エコノミー」という表裏一体の問題についての提起をして頂きました。(詳しくはSDAIニュースをご覧ください。)海に面した同エリアは職住隣接の居住区として再開発される前は工業地帯でした。土壌を整備し水質を浄化してのランドスケーププラン、特にヒューマンスケールな親水性を備えた水辺の景観に配慮した街として生まれ変わりました。 集合住宅は6階建の建築が主体で、ガラス面を多用し過ぎた(ヒートロスの問題)との反省も聞かれますが、今般筒井氏が住宅について回想するに、その室内のスケールや内装などは、この50年間あまり変わっていない印象だとのコメントでした。つまり暮らし方,生活の仕方の基準そのものが、良い意味でほとんど変わっていないことが理由ではないかとの見解でした。すべての計画が完成すると3万人が暮らす街になります。 トラムをはじめ公共の交通機関が整備され、自転車のレンタルが充実。エコの思想から自動車については制限されており利用はカーシェアリングが原則、その機会としては週末に2〜3家族が一緒にまとめて買物をするなどです。但し、立地の特性を生かし拠点を結ぶ無料の連絡船(例:ガムラスタンまで行ける)が運行するなどボートとスウェーデン人の関係を示す個性的な一面が窺えました。 ハンマビーモデルとは、すべてが循環している仕組みのことともいえます。戻せるものは出来るだけ戻すという思想です。住戸からのゴミや下水がエネルギーとなって再生されます。例えば出たゴミはパイプによって繋がった、投げ入れるゴミ集めの装置によって、同エリアに設けられた5ケ所の処理施設に集められバイオガスへとリサイクルされます。下水処理場の機能は火力発電所と連動したエネルギー供給の仕組みになっています。 これからの世の中は「エコロジー」と「エコノミー」の両立が大きな社会テーマであり、日本が北欧社会に学ぶ要諦でもあると思います。そして、そのためには教育という必然的な課題が問われてくるわけですが、今日のスウェーデン社会が環境先進国といわれる由縁は、まさに幼児期からの環境教育にあるとの見解を筒井氏から頂きました。 例え厳しい冬でも3〜4歳から外で過ごさせる森のムッレ(自己責任の在り方も含め体験的に学ばせる野外教育)がスウェーデンの環境教育の基本であるということ。いかに自然と接することを大切にしているか、幼児期の自然との係わり方について大変興味深いお話をお聴きできました。やはり最も大切なのは環境にしても、エコについても、その教育であるとの強いご意見でありました。 東日本大震災は原子力発電所の問題を大きく社会に提起しました。このテーマは今日私たちが向き合っている文明が転換期を迎えようとしていることを示しているといっても過言ではないと思います。北欧諸国におけるエネルギー問題では、それぞれ国情がありますが、今後スウェーデンでは現在12基ある原子力発電所を全廃する方針が示されています。それを補うのは水力発電,木材チップを応用したバイオによるエネルギーの検討であるとのことです。 そして、いわゆる3Rのなかで,長く使い続けることが一番のエコであるとの意識の大切さを、あらためて見つめ直すとき、作ったものは壊さないという…平和への思いにも相通ずる価値観を、もっと私たちは持つべきだとの意見を頂き、悲劇の震災を通じ、せめて人々の助け合いの気持ち,思いやりの心が、やがて上から下への日本型タテ社会の構造を脱して北欧型のヨコ社会へと、イデオロギーも含めて向かっていくことを願いますとのご意見を頂くと共に、震災では多大なる犠牲と被害が出ました。期せずしてタイムリーな企画となりましたが、被災された方々には心よりお見舞い申し上げますとお気遣いの言葉で結んで頂きました。 ■2.ストックホルム・ファーニチャーフェア2011 …川上信二氏(当協会理事) 川上氏は1960年代のスウェーデンに学び、ご家族での生活拠点をストックホルムにお持ちでした。その後も深い縁(えにし)のもとに同国との親善とインテリアデザインの発展にご尽力されてきました。今年60回目を迎えたストックホルム・ファーニチャーフェア2011の報告は、そうした川上氏ならではのストックホルムへの親しみと眼差しから語って頂きました。 特に長年の現地の友人やデザイナー仲間、業界の関係者からの生情報や作品の評判、感想など交えての説明・レポートは、撮影されたスナップ写真と相俟って臨場感を醸し出しておりました。 さて、ご参考まで欧州の家具フェアは、1月のドイツはケルンと仏国のパリ,2月のコペンハーゲン,そして世界的な規模へと発展した4月のミラノサローネなどが有名ですが、北欧の有名家具ブランドが一堂に会するストックホルムのフェアも1951年からの長い積み重ねがあり、北欧家具の魅力を伝えるに相応しいフェアであるとのコメントでした。 (文責:企画担当 青柳一壽) #
by sadiinfo
| 2011-05-08 18:10
| 講演会
2011年 03月 14日
今週18日(金)に東大弥生講堂にて予定されておりました,
須藤生氏講演「スウェーデン家具修行の10年」につきましては, 地震の影響により中止とさせて頂きます. 楽しみにしてくださっていた方には大変申し訳ありません. 被災地の皆様には,心よりお見舞い申し上げます. #
by sadiinfo
| 2011-03-14 10:25
| 講演会
2011年 02月 11日
座談会「北欧デザインの根を考える/フィンランド編」 パネリスト:沼尻良氏(OJM STUDIO主宰・当協会理事) 進行役:益子義弘氏(東京芸術大学名誉教授・当協会理事) 2011年1月28日(金)東京大学弥生講堂アネックス・研究棟講義室 ここ数年協会内で温めてきた企画として,各々が持つ北欧観を披瀝しあい,北欧デザインに惹かれる根の部分とは何かを掘り下げようとする試みの一つ,「北欧デザインの根を考える」をテーマに座談会が開催された.第一回目のパネリストには当協会理事で,自身フィンランド・タンペレ工科大学への留学経験を持つ沼尻良氏(当協会理事)を迎えた. 氏の話はまず自身がフィンランド留学を目指した当時の時代背景に触れ,「人は行き詰まると北を目指す」と当協会の記念講演で内藤廣氏が発言された言葉を引きながら,自身の当時の「北」に対する憧れや郷愁について語った. アールトについては,氏は若い頃は「正直よくわからなかった」という.それは経験と共に理解が深まり共感を増してゆくものなのかもしれないとし,アールトをはじめとしたフィンランドデザインは,建築をはじめ人生の機微を経験しないとその土台は理解できないのではないかと語った. フィンランド建築・デザインを理解するための手がかりとして,以下いくつかのキーワードを用いて説明した. ・自然・風土性 とにかくフィンランドの建築・デザインは,その豊かな自然と切り離すことはできない. フィンランドの建築家は,建築やデザインの手がかりのほとんどを自然と結びつけている. ・国民性 シャイで無口.無骨,素朴,気取らない性格などは日本人の性質にも似ている. ただ一方で,孤独を偏愛する国民性などは日本人とはある意味対照的とも言える. 等間隔に距離を保って バスを待つフィンランド人 また,建築家セヴェリ・ブロムステッド氏が語った言葉として「ユンティ(Juntti・フィンランド語で,洗練されていない,田舎者などの意味)」という言葉にフィンランド建築・デザインの本質が隠されているのではないか,といったエピソードを披露した. ・簡素の美 シンプルな簡素の美を尊び,装飾を嫌う性質は日本人の感性にも通じるものがある. フィンランドデザインは,徹底して合理化した実用のデザインでもある. ・無意識性 養老孟司氏の「日本は無意識から始まった文化」であるとの言葉を引き,同様にフィンランド文化も無意識によって形成されているのではないかと語った.フィンランドのデザインは言葉で明確な説明はできず,デザインや行動も直感的である. ・無宗教的 直感によって率直な行動をする.宗教観に縛られないところは日本にも通じる.日本と同様,自然の中に神が宿るとした無意識的な宗教観があるのではないか. ・現実的(リアリティ) 現実に建たなくては意味がない.カイ・フランクもリアリティを重視し,アールトもまた「デザインするな.解決しろ」という意味の言葉を残している. ・木との関係 フィンランドには何でも木で作る文化があり,食器やカトラリなども木で作ってきた.建築の例では,ペタヤベシの木造教会などはシャンデリアすらも木で作られていた. 上記以外にも氏の細やかな観察眼から,多くのフィンランドを理解するためのヒントや楽しいエピソードの数々が語られ,提示されたキーワードの多くは同じくフィンランド建築・デザインを愛する筆者の私感とも重なり,深く共感を覚えるものだった. 冒頭で沼尻氏が,フィンランドデザインを言葉で説明するのは難しいと語ったとおり,今回のテーマを噛み砕き,聴衆にいかに伝えるかについては氏も相当苦労をされたようだ.ただひとつのキーワードで「フィンランドは○○である」と括ることができないところが,フィンランドという国の懐の深さであり魅力なのかもしれない. 今回は座談会形式ということで,会場からもそれぞれのフィンランドに対する思いや意見などが出された.そこでは皆同じようにフィンランドという国やアールトに対する愛着を抱きながら,各個人の受け止め方や解釈にはまた微妙に温度差があり,十人十色のフィンランド像があるのだということも実感させられた. そしてそれはもちろん他の北欧諸国についても同じことが言えるだろう.今後も協会として,今回のフィンランド編の続編も含め,北欧各国のデザインの根を考える試みとして継続してこの企画をシリーズ化していきたいと思う. 進行役の益子義弘氏 会場からも活発に発言が飛び出した (文責:企画担当 関本竜太) #
by sadiinfo
| 2011-02-11 10:11
| 講演会
2010年 11月 30日
定例講演会「スウェーデンの居住環境計画」 講師:小川信子氏(日本女子大学名誉教授・工学博士・当協会会員) 2010年11月19日(金)東京大学農学部7号館114+115教室 小川さんは1986年〜87年、2003年05年の2回にわたり、スウェーデン王立工科大学の客員研究員としてスウェーデンの居住環境の調査・研究を行ない現在もなお続けておられます。当協会では既に2回にわたり講演をしていただいておりますが、昨年日本生活学会サマーセミナー「福祉の街・フィリップスタッド訪問」を団長として実施されておられます。今回は私達の熱望に応えて、それらの資料をもとに、表題の講演をしていただきました。 先ず「はじめに」と題して、世界の最先端を行く福祉政策をさらに進めている最近の地域環境整備について「高齢者の生活環境の変化を居住計画と連動させる。2009年7月1日、家族、親族介護支援をコミューンの義務とする社会サービス法の条項が施行されたが、それは1999年のコミューンに対する奨励条項として同法に新しく加えられた。」このことでさらに環境が充実されていると述べられ、1.高齢者への対応、2.フィリップスタッド市の例、3.リンショッピング市ストールプリッカン共同住宅における新しいコミュニティのはじまり、そして4.「おわりに」として持続可能な社会を構築するために、都市計画・地域計画において住民が必要とする諸施設の充実など、住民との接点で考察がすすめられていると結ばれ、貴重な映像と図面入りの講演要旨をもとに2時間にわたり、お話をいただきました。 「高齢者への対応」では、これまでの100年にわたる福祉政策の蓄積を年代により分りやすく俯瞰して、20世紀初頭の施設中心、自宅での親介護からはじまり、1950年代のコミューンによる要介護高齢者の自宅介護、1980年代の経済不況時の苦難、1990年代エーデル改革により、家族・親族介護及びインフォーマルケアに再び注目。2000年に入り特別な住宅の居住者は次第に減少、高齢者住宅のケアから在宅ケアへのシフトが見られるとともに在宅ケアが家族・親族介護への支援と組み合わされるようになった。ホームヘルパーサービスを受けている高齢者は2006年には1000人中89人にのぼっている。 家族介護が見直される背景には家族に対するケアの充実が十分に配慮され、我が国における福祉政策の致命的な欠陥に対して、成熟したスウェーデンの福祉政策の充実ぶりの原点として特に力を入れて指摘されました。その典型的な実践例として推賞されている自治体としてスウェーデン社会の発展に寄与した「エリクソン兄弟」の出身地でもある「フィリップスタッド市の例」をあげ詳しく解説されました。 社会サービス法をうけて、市の責任としては助けを求めた人のための法律、命に危険がおよぶような状況を除き自己決定権を尊重、これらを基本にした支援対象、支援内容ついてはその気配りの充実さに驚かされました。実現には程遠いものの、我が国における福祉政策の理想像としての存在感をじっくりと感じさせるものがありました。 次に「リンショッピング市スト−ルプリッカン共同住宅」の例では、省エネ型住宅建設を目指して1977年から住民の要求からはじまり、1980年に市に近い共同住宅建設会社により建設され、現在まで住民代表6名をトップに公営住宅会社、市社会福祉部、借家人組合の代表それぞれの2名づつからなる運営委員会によって運営され、住民本意の充実された生活が実現されているとのこと、1986年に訪問してから既に24年が過ぎている現在も美しく使っており、住民も成長している実情を数々の映像により解説されました。 運営方針の中で「ケアつきの住宅を孤立させない。廊下を共有スペースとして、触れあいの場をつくっている」その実例として廊下の壁に優雅な絵が描かれている状景、行き止まりの壁になお先へ続く廊下がユーモラスに、しかも繊細なパースで絵描かれており、いかにも豊かな雰囲気を醸し出している情景は誠に印象的でした。 行き止まりの壁に描かれた廊下の絵 「おわりに」のところでは、マルメ市の超近代的ビル建設の中でも建設的な住宅建築が続いている例や、中層の木造建築による画期的例など刺激的な映像と解説を付け加えられ、最後に、安らぎの象徴としてアスプルンドの森の墓地の映像で講演を終りました。 今回は小川さんの親しい研究仲間の方々をはじめ熱心な地域行政研究の方々も多く見え、成熟したスウェーデンの居住環境の実体に溜息まじりの声が出ていました。当然、質問も日本との大きな落差と、その差を埋める方策に集中され、熱気のある雰囲気のなか恒例の懇親会に引き継がれ、会を終了いたしました。 木造の高齢者住宅 森の墓地のスライドで終了 (文責 企画担当 川上 信二) #
by sadiinfo
| 2010-11-30 08:20
| 講演会
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